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その古ぼけた家の門はぴっしりと閉じられていて、塀も高くて登れない。
本当は危ないから入ってはいけないのだけど、ある日僕は塀の一部に穴が空いている場所を見つけてしまった。
ちょうど、僕が通り抜けられるくらいの穴だ。
持ち前の好奇心が駆り立てられて、僕は穴に身体を滑り込ませた。
すると、背の高い雑草が目の前に広がった。少し距離をおいて、やせて枯れた木が一本立っている。
僕はおっかなびっくりしながらも、注意深く雑草をかき分けて前へと進んだ。
おやおや、どこから入ってきたんだい?
その人に声をかけられたのは、そのときだった。
縁側でぽつんと座っている、おじいさんがいた。僕は怒られるものだと怯えてしまったけれど、おじいさんはしわくちゃな顔を優しげに歪めて、僕に手招きしたのだった。
怖がらなくていい。こっちへおいで。
僕はその声にひかれて、ゆっくりとおじいさんが座る縁側へと近付いた。
少し前のめりになったおじいさんは、細い腕を伸ばして僕の頭に手をおいた。
その手の動きはぎこちなくて、くすぐったかった。
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