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✩.*˚
気合いを入れてワンピースを着てきた割に、ほかの女子メンバーにうずもれる形になった。
内心ちょっとほっとしつつも、脇の下に汗を感じる。
「楓、なんか痩せた?」
「え、そうかな?凪もやせたんじゃない?」
「いーよいーよ、そういうお世辞(笑)」
「あれ、今日4人て聞いてたけど、、、」
女子メンバーの中に初めて見る人がいた。
「急遽、美人枠で紗英ちゃんに来てもらうことになったんだよね。あ、あたしの会社の後輩ちゃん」
こういう、急遽変更に着いてけないあたしは仮面の笑顔で乗り切る。仮面の下はすごく不安でいっぱいだった。あたし、凪、ヨッシー、えみり、紗英ちゃんの4人でスタート。
お相手は製菓会社に勤める20代後半男性陣。一見20代ですか、本当に?と疑いたくなる人もいる。まぁ、幕開けはそんな所。
よく見知ったお菓子をもらい、
「これ、ほんとに好きなんですぅ」と媚びた返事で愛想を振りまく美人枠に「いやいや、こんな可愛い子に言われたら、照れちゃうよ、なぁ?」とお決まりの返事。
あたし、来る意味あったのかなぁなんて考えてると、グラスの口元で炭酸がプチッと弾けた。
気づいたら咄嗟に手を挙げて「ハイボール下さい〜」と叫んでいた。その手を凪が下げる。「ほんとに飲みすぎだから、ほんとに。ちょっと、席外れまぁす」トイレに連行されるあたし。
「ちょっと、何があったかわかんないけど飲み過ぎだからね」
「だって、あんな可愛い子いたらあたし来る意味なかったって思うよ、本当に。別に悪くいうつもりないけどさ、ぁ」
不思議だった。頬を伝って暖かい物がポタっと落ちた。こんなふうに泣くなんて敗北者だと思ったし、みっともなかった。
「今日はうち来て、語ろ、話聞くから」綺麗に決めてきたポニーテールをクシャッとつかんでわさわさされていた。あたしは抵抗する力もなく、涙で伸びたマスカラを必死に指で拭った。
合コンお決まりのLINE交換のあと、あたしは凪とタクシーに乗っていた。
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