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空を見つめて、雨を待つ。 どこかの部屋から流れてきた天気予報では、昨日から雨のはずだったのにと、恨めしく睨む。 先ほど、少し降ってきた。あと数日もすれば、干からびそうな池に半身をつけながら、空を見つめる。少し文句を言ってみる。大粒の水滴を浴びる準備万端で、待ち続けて、そろそろ四十時間ほどだ。そろそろ願いを叶えてくれても良いじゃないか。口から空気を吐きながら、池に戻る。ブクブクと水面に向かって、伸びていく気泡をしばらく見ていた。仲間もそのようにしているのか、遠くでも泡がたくさん見える。 泡を見ていたが、そのうち瞼が重くなって池底でうたたねをする。一時間ほど、夢の中をさ迷っていただろうか、そのくらいに水面を叩く音がした。片目を開けて、ちらりと見てみた。恵みの雨かと期待もしてみた。ここ連日、子どもが池に砂を蹴り入れるので、おそらくそれだろうと、また石影に隠れてうたた寝を始める。嫌だなと目を深く閉じ、落ちてくる砂利の音に備える。しかし、それが聞こえてこない。もしかして雨かと、長い足で力いっぱい石を蹴る。普段は気にならない水圧を、短い手でかき分ける。おそるおそる顔を水面に出すと、待ちに待った雨が降っていた。頭を打つ雨に、思わず笑い出してしまった。 頭にあたる雨が痛い。それも気にならない。思ったより小粒だが、振らないよりずっとましだ。しばらく、雨に打たれていたら、雨雲はどこかに行ってしまった。思えば、あっという間だった。もう雲間から光が見えている。また雨を待つのかと思うと、少し寂しい。それよりも満足感が大きい。まだ肌に張り付いている雨を、かみしめるように瞬きをする。湿った土の匂いを胸いっぱいに吸い込む。風が池の周りの草木を、ざわざわと騒がせる。木々も喜んでいるのかと、耳をすませてみる。すると周りの仲間も笑っていることに気が付いた。それから、また堪えられず笑い始める。ひとしきり、仲間で合唱するように池の周りでくつろいでいた。 しばらくすると、一つ、また一つ、影が池に飲み込まれていく。さあ、もうひと眠りして、次を待とうか。
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