真夜中でもいい、会いに来て。

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 本当に、不思議なくらいあっという間に時間が過ぎた。  親族への連絡や葬儀会社への連絡は、いつの間にやっていたんだろうか。  やっぱり、私の中にはもう一人の私がいるのかもしれない。夫の死を完全に受け止めることなど、まだできていないはずなのに。  葬儀中に涙一つ流さず、淡々と冷静に事を進めていく私を、誰も“冷たい女だ”とは責めなかった。むしろ表情を無くした私の代わりに泣いてくれる人の方が多かったように思う。  私は冷静にやっているつもりだったけれど、実はだいぶ様子がおかしかったのだろうか。それでみんな同情してくれたんだろうか。  私には、よくわからない。何せ、ほとんど記憶にないのだ。早送りみたいに、よくわからないまま時間が過ぎていった。  記憶にあるのは、夫の肉体が煙となって、空へ昇っていくところだ。  “ねぇ、どこに行っちゃうの? ”  私はぼんやりとそんなことを思った。  私の知っている夫は本当に煙のように消えてしまって、見たこともない白い骨の欠片だけが残った。それは、砂浜に落ちている貝殻みたいに真っ白で綺麗な欠片だった。  拾い集めても、実感が湧かなかった。これが夫なのか。こんな夫は知らない。では、夫でないのなら、これは何なのか。  でも、やっぱりこれは夫の骨に違いない。背が高くて、体が丈夫だった夫らしい。骨壷に骨が入りきらなかった。 「気をしっかりね」  誰かがそう言った。
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