君色に染まる。

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他愛もない話をしながら葉月くんと歩く、駅までの道。 結構な距離だから大通りでタクシーを拾おうかとも思ったけど…やめた。 歩いた方が葉月くんと長く一緒にいられると 思ったから。 「七海はデザイン関係の仕事だっけ?何かかっこいいよな」 「ううん、実際は下っ端だから毎日てんてこ舞い。かっこよさの欠片もないけど…でも楽しいよ」 「ははっ、そっか」 「葉月くんは外資系企業でしょ?そっちのがかっこいいよ」 「いや、留学経験を活かしたくて今の会社に 入ったのはいいけど俺も結構てんてこ舞いかも。でも仕事はやりがいがあって楽しいけどね」 私も葉月くんも自分のやりたい仕事に就いていて、ちゃんと自分の足で今を生きてる。 私もみんなと同じように忙しくて充実した毎日を過ごしてるはずなのに… なにかが足りない。心が満たされないんだ。 本当は…あの日から、ずっとそう感じている。
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