君色に染まる。

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「まだあるよ。俺の最後の一本」 再び浮かび上がった葉月くんの顔。 その表情はいつになく真剣だった。 「七海」 「ん?」 「この線香花火が消える前に…もう一度だけ、あの夏をやり直したい」 「え…?」 「あの頃はあれが正しい選択だと思った。まだ子供で…綺麗に別れることしか考えられなくて」 確かに記憶の中の葉月くんはいつも綺麗だった。 かっこよくて努力家で優しくて…いつも笑っていて。 私はそんな葉月くんが大好きだった。 「でも…綺麗に別れたはずなのに、ずっと七海を忘れられなかった。他の誰と付き合ってもしっくり来なくて、何しても全然楽しくなくて、空っぽで…」 「私も…私も同じだよ…!」 想いが重なり合った時、葉月くんが持っていた線香花火の珠がゆっくり地面に向かっていく。 ポトリ、音も立てずに落ちた赤橙色を… 私は、葉月くんの腕の中で見ていた。
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