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小無多亜希。
何しろ名字が頂けない。
「コブタ」と読めてしまう名字はそのまま私の様相を表している。
まるっこい体にちょっと上向いた鼻、おまけにちび。
逆立ちしたって「アキ」というイメージではない。
こねくり回してイメージを近づけようとしても、名字のインパクトには負ける。
仲の良い子は「こなっちゃん」と呼んでくれるけれど、ほとんどの人は陰ながら「コブタちゃん」と呼んでいる。これほど、私を言い表すのに最適な言葉もない。
さすがに真正面から呼ばれることは少ないけれど、逆に苦情を言うこともできずにずるずるきてしまった。
「おい、ぶたこ」
だから、こういう大人になりきれなかったバカな男が私をこう呼ぶんだ。
教室の片隅のこの時期はあくびをかみ殺すのに必死な席。
その席で春のうららかな陽気を楽しんでいたっていうのに。
顔を上げると、幼馴染の悠太の顔に憎たらしい笑みが広がった。
「英語の訳、やってきてあんだろ?」
ええ、ええ、やってますとも、やってますとも。
それがどうした?
ポケットに手を突っ込んで、前髪長くしたって、お前が小4まで夜に一人でトイレも行けなかった事実は消えないぞ。
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