この熱はきっと。

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夏の暑さが残ったまま、訪れた秋の初め。 今日から2日間、私の通う高校では文化祭が開かれる。 そして私は、文化祭実行委員の委員長。 だから今日は、これまで準備してきたことがやっと報われる。 ……そう、思っていたのに。 「委員長!」 「すみません、トラブルが…!」 「食材が足りないんですが…」 「ライブの観客席が足りないみたいです!」 当日の忙しさと、初日から予想外のトラブル連発に、私は既に逃げ出したくなっていた。 「委員長!!!」 「はーい!今度は何…」 呼ばれて反射的に振り向くと、同じ実行委員の紺野くんがいた。 「大変です!一緒に来て下さい!」 彼にぐいっと手を引っ張られ、私はどこかへ強引に連れて行かれる。 いつもは走ったら怒られる廊下も、トラブルだと呼ばれれば今日だけは仕方ない。 私達は走った。 連れられた先は、誰もいない教室。 そんな場所に到着し、私は彼に握られていた手を振り払う。 「ちょっと!一体何なの!!今度は何?食材?イス?一体何が足りないのよ!?あーもう!!!」 走った事により息切れし、今抱えているトラブルと合わさって私の心臓は限界を迎える。 後輩の彼に、思わず叫んでしまった。 はあ、はあ、と荒くなった息遣いが誰もいない無音の教室に響く。 「すみません、先輩」 彼に謝られ、私はハッとする。 違う。 彼は悪くない。 キャパオーバーで後輩に怒りをぶつけるなんて、最低だ。 「ごめん紺野くん。私、今ちょっと余裕がなくて……」 私は間違えてぶつけてしまったことを謝る。 「いいえ先輩。ほんとは何もトラブルなんてないんです。俺、嘘をついたんです。だから先輩は謝らなくて良いんです」 「え?」
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