この熱はきっと。

2/7
前へ
/7ページ
次へ
夏の暑さが残ったまま、訪れた秋の初め。 今日から2日間、私の通う高校では文化祭が開かれる。 そして私は、文化祭実行委員の委員長。 だから今日は、これまで準備してきたことがやっと報われる。 ……そう、思っていたのに。 「委員長!」 「すみません、トラブルが…!」 「食材が足りないんですが…」 「ライブの観客席が足りないみたいです!」 当日の忙しさと、初日から予想外のトラブル連発に、私は既に逃げ出したくなっていた。 「委員長!!!」 「はーい!今度は何…」 呼ばれて反射的に振り向くと、同じ実行委員の紺野くんがいた。 「大変です!一緒に来て下さい!」 彼にぐいっと手を引っ張られ、私はどこかへ強引に連れて行かれる。 いつもは走ったら怒られる廊下も、トラブルだと呼ばれれば今日だけは仕方ない。 私達は走った。 連れられた先は、誰もいない教室。 そんな場所に到着し、私は彼に握られていた手を振り払う。 「ちょっと!一体何なの!!今度は何?食材?イス?一体何が足りないのよ!?あーもう!!!」 走った事により息切れし、今抱えているトラブルと合わさって私の心臓は限界を迎える。 後輩の彼に、思わず叫んでしまった。 はあ、はあ、と荒くなった息遣いが誰もいない無音の教室に響く。 「すみません、先輩」 彼に謝られ、私はハッとする。 違う。 彼は悪くない。 キャパオーバーで後輩に怒りをぶつけるなんて、最低だ。 「ごめん紺野くん。私、今ちょっと余裕がなくて……」 私は間違えてぶつけてしまったことを謝る。 「いいえ先輩。ほんとは何もトラブルなんてないんです。俺、嘘をついたんです。だから先輩は謝らなくて良いんです」 「え?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加