8人が本棚に入れています
本棚に追加
思わぬ展開に、既に熱を帯びた脳は思考を停止させる。私は目を見開いて、立ち尽くしてしまった。
(今のって…………)
触れた感触が、私の唇に残っている。
その感触を反芻するかのように、私は無意識に自分の唇に指を当てていた。
その様子を見て、彼はクスッと笑った。
「足りないですか?」
いつもはポメラニアンのくせに。
今は狼みたいな悪い顔をして、私を見つめてくる。
「足り……は!?」
言われた言葉に、思わず声を荒げる。
「足りないとか、そういう問題じゃ…なくて……」
言い返そうと思ったのに、興奮したら頭がクラクラして、言葉が続かない。
「蘭先輩。もう1回キス、してい?」
言い返してこない私を見て、彼はストレートに聞いてきた。
「てゆうか、しますね」
いや、正しくは、“言ってきた”。
しかもさっきは勝手に奪っておいて、今更何の伺いを立てているのか。
宣言を終えると同時に、彼は私の両手首を掴み上げ、顔の両脇に押さえつけてきた。
「ちょっ……!」
私は必死に抵抗するも、掴まれた手首はびくともしない。
熱で私の力が出せていないからなのか。
彼の力が強いのか。
どちらなのかも、判断が出来ない。
そんな事を考えている間に、彼は唇を重ねてきた。
手首は掴まれたまま、顔が近づく。
何度も。何度も。何度も。
触れては、離れを繰り返す。
……それから何十回とされてようやく、キスが止まった。
最初のコメントを投稿しよう!