gggg

3/16
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「これくらいでいいだろう」 「またバツッと切る! 話題の流れを意識して!」 「えっ…………ふーん…………俺、じつは、ワダイノナガレのこと、好きかもしれねえ……!」 「誰が恋心を意識しろっつったよ!」――――  お手の物のはずだった。  が、 『漫才王』決勝戦、九組中、七位という結果である。  最悪と言っていい。最下位なら最下位で逆においしくもあるのだ。こんなもんいじりようがない。  決勝まで残っただけでもすごいはずなのに、自分でそれを吹聴しても変な空気になる。  来年、優勝すればいいと角幡は言っていた。簡単に言ってくれるな、ネタ考えるのは俺だぞ。  勝ち上がるの最優先で自信のあるネタから順番に使っていったのが間違いだったかもしれない。とはいえ俺も角幡もネタを使い回す気にはなれなかった。はいはい言いわけ言いわけ。  辛酸を嘗めた十二月も過ぎて、新年がやってきた。初詣客でごった返す境内で俺と角幡はもみくちゃになっていた。  真冬なのに人びとの熱気にあてられる。列で参拝の順番を待つあいだ角幡が話しかけてきた。曰く、後輩芸人がゴールデンのドッキリに出ていたらしい。彼らは準決勝敗退組であり、厳然として俺たちのほうが面白いはずである。角幡にそう訴えてはみたが、あいつらには華があるからとたしなめられた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!