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ネタ合わせや収録のときにしか顔を合わせていなかった角幡とプライベートでも会うようになった。ことさら会いたくはなかったが、あいつにはあいつの間があり、それを理解していればもっと漫才で間を活かせるようになるのではと踏んだからだった。
生放送の収録が終わり居酒屋で反省会でもするかと街を歩く。
世間は正月休み真っ只中であり夕方でも人通りは絶えない。これだけ人がいるからには俺たちを知っている者もいて、サインを求めたり、気づいたけど興味がないのかスルーしたり、はたまた一発ギャグをやれと無茶振りされたりする。そういうときはたいていほかの芸人のギャグを全力でやることにしていた。
そんなふうに何人かを相手にしながら歩いていると後ろのほうでもざわめきがあった。ほかの芸人でもいるんだろうと何気なく背後を見やると、探偵がいた。
いや、実際の探偵はおそらくあんな格好はしないから、探偵ではないのだろう。
鹿撃ち帽を被り、インバネスコートに身を包み、パイプをくわえている。
しかも外国の男性であり、えらく美形でモデルのようだった。撮影かと思うがそれらしいスタッフの姿はなく、俺が振り返るとそそくさと身を隠したように見えた。
「なんだあれ」
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