1話 ここって事故物件ですよね?

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「あれ?お兄さん、どうかされました?」  深咲が不思議そうに訊いてくる。  妹の友人と言うこともあり、深咲は俺こと依田鑑(よだ かがみ)をお兄さんと呼ぶ。 「おい、ほんとにこの部屋なのか?部屋の中に女の子が居たぞ……部屋、間違ってないよな?」  俺がそう訊いた瞬間、明らかに深咲の表情が変わった――ような気がした。 「えっ、ウソ?!そんなはずはっ!」  少し慌てた様子で深咲はドアを開けた。  そして、部屋の中を確認した上で、 「よかった……」  小さく聞こえないように呟いたあと――俺の顔を見て、 「気のせいじゃないですか?……確認してみましたが、誰も中に居ませんよ」 「はぁ?……だって、さっきは確かに女の子がそこに立って……」  改めて部屋を見てみると、誰の姿もない。それどころか家具すら置いていない普通の空き部屋だった。  おいおい……冗談だろ?さっきのコはなんだってんだよ?  一瞬、本気で彼女言うとおり気のせいかとも思ったけど、釈然としない。  いや、まてまて……あんなハッキリとした気のせいがあるわけねーだろ?  白昼夢にもほどがあるぞ!  そもそも、気のせいが会釈なんかするわけねーだろ?しかも、こんにちわって言ってきたし……。
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