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「あれ?お兄さん、どうかされました?」
深咲が不思議そうに訊いてくる。
妹の友人と言うこともあり、深咲は俺こと依田鑑をお兄さんと呼ぶ。
「おい、ほんとにこの部屋なのか?部屋の中に女の子が居たぞ……部屋、間違ってないよな?」
俺がそう訊いた瞬間、明らかに深咲の表情が変わった――ような気がした。
「えっ、ウソ?!そんなはずはっ!」
少し慌てた様子で深咲はドアを開けた。
そして、部屋の中を確認した上で、
「よかった……」
小さく聞こえないように呟いたあと――俺の顔を見て、
「気のせいじゃないですか?……確認してみましたが、誰も中に居ませんよ」
「はぁ?……だって、さっきは確かに女の子がそこに立って……」
改めて部屋を見てみると、誰の姿もない。それどころか家具すら置いていない普通の空き部屋だった。
おいおい……冗談だろ?さっきのコはなんだってんだよ?
一瞬、本気で彼女言うとおり気のせいかとも思ったけど、釈然としない。
いや、まてまて……あんなハッキリとした気のせいがあるわけねーだろ?
白昼夢にもほどがあるぞ!
そもそも、気のせいが会釈なんかするわけねーだろ?しかも、こんにちわって言ってきたし……。
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