12人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「お兄さん……大丈夫ですか?」
俺が葛藤してると、不安げな表情の彼女が声をかけてきた。
「……おかしいな……さっき間違えなくここに女の子が……」
彼女は俺の答えに「そうですか」と返すと、少し思案してこう切り出してきた。
「……実はまだここと同じくらいの金額で物件がまだ一つあるんですが、よかったらもそちらも紹介しましょうか?」
彼女の申し出に俺は正直、揺らいだ。
多分、気のせいだと思うが――いや、絶対気のせいだと思うけど、万が一でもさっきのが幽霊だったとしたら、と考えてしまうと、ほんとにこの部屋でいいのかって躊躇ってしまう。
「……ちなみにそれってどんな物件なんだ?」
「はい。1LDKでバストイレ……幽霊付きで、最寄りの駅まで徒歩五分っと言ったところですが」
ちょっと待て!今、さらって言った中に気になるワードが入ってなかったか?
「ごめん……バストイレとあと何が付いてるって言った?」
訊ねる俺に彼女は満面のスマイルを見せ、
「はい……バストイレと幽霊が憑いてきます」
何事もなかったかのような普通な感じで答えてくれた。
営業マンとしては凄く感じのイイ対応なのだろうが――。
最初のコメントを投稿しよう!