1話 ここって事故物件ですよね?

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「お兄さん……大丈夫ですか?」  俺が葛藤してると、不安げな表情の彼女が声をかけてきた。 「……おかしいな……さっき間違えなくここに女の子が……」  彼女は俺の答えに「そうですか」と返すと、少し思案してこう切り出してきた。 「……実はまだここと同じくらいの金額で物件がまだ一つあるんですが、よかったらもそちらも紹介しましょうか?」  彼女の申し出に俺は正直、揺らいだ。  多分、気のせいだと思うが――いや、絶対気のせいだと思うけど、万が一でもさっきのが幽霊だったとしたら、と考えてしまうと、ほんとにこの部屋でいいのかって躊躇ってしまう。 「……ちなみにそれってどんな物件なんだ?」 「はい。1LDKでバストイレ……幽霊付きで、最寄りの駅まで徒歩五分っと言ったところですが」    ちょっと待て!今、さらって言った中に気になるワードが入ってなかったか? 「ごめん……バストイレとあと何が付いてるって言った?」  訊ねる俺に彼女は満面のスマイルを見せ、 「はい……バストイレと幽霊が憑いてきます」  何事もなかったかのような普通な感じで答えてくれた。  営業マンとしては凄く感じのイイ対応なのだろうが――。
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