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「おい、もしかして……この部屋もその……じ、事故物件だったりするの?」
「いえ、違いますよ!」
あっさりと彼女は否定した。
ほっとした反面同時に疑問も生まれた。
なんでこの部屋はさっきの事故物件と同じくらいの金額なんだ?
だが、その謎はすぐに氷解する。
「事故物件は隣のこっちなんですよ」
そう言って、彼女は右側にある一番端の部屋のドアを指さした。
事故物件ってそっちぃぃぃぃ~っ?!
まさかの変化球に俺は素直に驚かずにはいられなかった。
「ウソじゃないですよ……こーゆうのって事前に言っておかないとコンプライアンス違反になりますからね」
「そ、そうなんだ……」
安さの理由――なんとなくだが納得は出来た。誰も好き好んで事故物件の隣で暮らしたいとは思わない。普通に不気味だし、幽霊が出そうな感じがするからだ。
「せっかくだから見ます?ヤバいんですよ、この部屋」
そう言って彼女はノリノリでバッグの中を探る。
「……てか、なんでその楽しそうなの?」
「えっ?!だってテンション上がりません?」
「上がりません!」
しかし、即答したにも関わらず彼女は意を介していない様子で、部屋の鍵を取り出すとドアを開く――だが、開かない。
「あ、あれっ?……このドアって、こんなに重かったっけ?」
彼女はあたかもドアが壊れているかのように言っているけど――実は中の方が全力で侵入を阻止してるんじゃないの?!
「ちょ、ちょっと待って……それって壊れてるんじゃなくて……」
俺が彼女の行動を止めようと駆け寄ると、
「あっ、開いた!」
マジですかぁぁぁ~?!
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