1話 ここって事故物件ですよね?

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「深咲……逃げるぞっ!」 「えっ……な、なんで?」  どうやら彼女には目の前に迫るあの化物が見えてないらしい。  そもそも見える見えないとかなんなんだよ!ピーキーな不可視モード付けやがって、どうせなら全員見えないようにしとけって!  内心、化物への恨み言を呟く。 「多分、ここで死んだヤツだ。なんか〇椰子みたいな状態でこっちに迫ってくる。早く逃げないとヤバそうだ」  慌てる俺の様子を見て、彼女もまたヤバいと認識してくれたようで、 「わ、わかりましたっ!」  二人でやたら重いドアを外側から引っ張って、ドアを閉めた。  ドアが締まった途端、ドアに何かが衝突したような激しい音が響いた。 「なっ……な、なんですか、今の化け物は?!」  ドアが閉まってからしばらくして、落ち着きを取り戻した彼女が口を開いた。 「俺が知るか……って言うか管理してるお前の方がここに詳しいだろーが」 「ヤバいですよ!もう完全に〇怨じゃないですか?中に居たの、間違いなくアレですよね?白いの居なかったけど、間違いなくあの人居ましたよね?!」  よほど怖かったのだろう。  彼女は俺の胸ぐらを掴み、大きな瞳に大粒の涙を浮かべ、必死に訴えてくる。 「気持ちはわかるけど……手、離してくんない?」 「あっ……ごめんなさいっ!」  俺に指摘されようやく彼女の手から解放された。
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