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身も凍るような風が吹く日だった。
前日からいい波が来ててな、調子こいて波を独り占めしてやろうなんて思ってさ。夜明け前にボード抱えて海に出たんだ。あの頃は俺も若かった。
辺りは月もなく真っ暗。いくら何でも寒すぎた。たちまち骨の髄から凍えちまって、仕方なく車に戻ると、ひと寝入りすることにしたんだ。でも、がんがんヒーター効かせたところで、芯から冷えた体じゃあ、なかなか寝つけるもんじゃねえ。ようやくうとうとしかけたころに
コツコツ……コツコツ
って、ためらいがちに窓を叩く音がしたんだ。
目を覚まして外を見ると、小学生くらいの女の子が立ってた。こんな時間にどうしたんだろうって思いながら窓を開けると
「弟を探して」
って消え入るような声で言うんだ。
「お父さんやお母さんはどうしたの?」
って聞いても、ただ俯きながら「弟を探して」さ。こんな時間に子どもだけってこともないだろう。どうやら親ともはぐれたらしい。眠気マナコを擦りながらも何とかしてやんなきゃ、って思ったね。
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