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「ええ? なにここ……なんでわたし達こんな所で寝てるの!?」
「いったいどうなってるんだよ!? 俺達、あの旅館にちゃんと泊まったよな?」
起き上がって周りを見回したA君達は愕然としました。
昨日は高級そうでイイ感じの部屋に思えたんですが、今見ると畳は所々ささくれてシミがついてるし、壁や天井も腐って剥げかけてるんですよ。それに今までかぶっていた布団もカビ臭いし、高級旅館どころか、まるで廃墟のように朽ち果てた部屋の中で二人は寝ていたわけだ。
「女将さーん! 仲居さーん!」
飛び起きて部屋の外に出て見ても、やっぱり同じ状況ですよ。慌てて女将さん達を呼んでみるんですが、あの二人の姿もどこにも見当たらない。
「なに? 何がどうなってるっていうの!?」
「俺だって知らないよ! とにかく早くここから出よう!」
わけがわからずパニックになりながらも、A君達は転がるようにしてその廃墟を逃げ出しました。
その後、いろいろ調べてわかったんですがね。以前、あの旅館では女性客が入浴中に亡くなる事故が起きていて、それ以来、その幽霊が出るっていう噂が広まって客足が遠のき、ノイローゼになった女将さんと従業員も不可解な死に方をして見つかったようなんです。
それからはずっと放置され、現在は荒れ放題の空き家になっているはずなんですがね……今もその旅館の建物は某観光地の山際に残ってるみたいですよ。
(人気のない旅館 了)
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