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そういう経験ってのは、誰でも一度や二度はあると思うんですがね。
泊まるホテルや旅館に入った瞬間、「うわあ、ここなんかやだなあ、ぜったいに何かあるなあ…」って直感でわかることがままあるんです。
これも、私の仕事仲間とそのカノジョが、とある温泉で有名な観光地で体験したそんなお話です。
彼の名前はA君、カノジョはB子さんとでもしときましょう。
二人とも普段は忙しく仕事してるんですが、急に休みがとれたんで「それじゃ、温泉でも行ってゆっくりしようか」って話になったんです。
でも、誰でも知っている有名な観光地ですよ。急なことだったんで、宿の予約もせずにいざ行ってみると、どこも満室で泊まる所がない。観光案内所に訊いてみても、やっぱり見つからないんです。
とはいえ、このまま帰ったらせっかくの旅行が無駄になってしまう。
「困ったね、どうしよう?」
「でも、小さな民宿とかならまだ空いてるかもしれないし、ちょっと探してみようよ」
車で来たA君達は市街地からちょっと離れた山の端まで、自分達でホテルや旅館を端から尋ねて回ったんです。
そうしたらですよ。山道を少し分け入った静かな場所に、けっこうな大きさの旅館が一棟建ってるんです。
少々古めかしい観はありますが、たいそう立派な門のある純和風造りですよ。いわゆる〝隠れ家的〟な宿って感じで、なんともいい雰囲気なんです。
こんなステキなとこ、さすがにもう空いてないだろうなあとは思いましたが、それでもと入って行って訊いてみると、そこの女将さんらしき人が「ええ、空いてますよ。二名様でよろしいですか?」と、これが泊まれるっていうんだ。
もう夕暮れ近い時間帯でしたし、これ以上探しても他に空いてる所なんかありそうにないですしね。「いやあ、訊いてみるもんだねえ。探し回ったかいがあったよ」なんて言いながら、A君達は即決でそこに泊まることにしました。
女将さんの他にもう一人仲居さんがいて、その仲居さんに連れられて部屋に向かったんですが、その間に見た内部の造りもまあ立派なもんですよ。
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