夜叉

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ゾクゾクした。 暗闇の中、僅かな月光を頼りに翔ける。 刻限は曖昧にしかわからないが、真夜中だということだけは確かだ。 聞こえるのは自身の呼吸の音と草履が土を蹴る音だけだ。かなりの距離を走っているが、不思議と疲れは感じない。呼吸も落ち着いている。 ただ、気分だけは高揚していた。 目的地まであと少しというところで僅かに気配がした。足を止め、刀に手をかける。 低い声が響いた。 「お前が来たか。」 「お生憎様。君の相手ができるのは僕くらいだからね。」 憎まれ口をたたきながら、刀を握る手に力を込める。 次の瞬間、手に衝撃が走った。 相変わらず、重い。 自然と口角がつり上がった。 こんなにも気分が高鳴ったのは久しぶりだ。 楽しい。
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