1人が本棚に入れています
本棚に追加
ゾクゾクした。
暗闇の中、僅かな月光を頼りに翔ける。
刻限は曖昧にしかわからないが、真夜中だということだけは確かだ。
聞こえるのは自身の呼吸の音と草履が土を蹴る音だけだ。かなりの距離を走っているが、不思議と疲れは感じない。呼吸も落ち着いている。
ただ、気分だけは高揚していた。
目的地まであと少しというところで僅かに気配がした。足を止め、刀に手をかける。
低い声が響いた。
「お前が来たか。」
「お生憎様。君の相手ができるのは僕くらいだからね。」
憎まれ口をたたきながら、刀を握る手に力を込める。
次の瞬間、手に衝撃が走った。
相変わらず、重い。
自然と口角がつり上がった。
こんなにも気分が高鳴ったのは久しぶりだ。
楽しい。
最初のコメントを投稿しよう!