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俺の名前は、珠洲河 颯司。
今や世界に名を馳せる珠洲河家の長男で、詩乃薔薇中学校の吹奏楽部でチューバを吹いている3年生。
そんな俺には、今気になる子が居る。
気になる、といっても恋愛的な意味ではない。
──三谷 乃愛ちゃん。
吹奏楽部に新しく入った1年生で、サックスパートでテナーサックスを吹いている。
朝練や休日練では遅刻ばかりするし、それで焦って走ってくる、なんて事は無く、余裕そうにゆっくりと歩いてくる。
他の1年の子も最初の方は1、2分程遅刻する事があったが、暫くするとしっかり時間通りに来るようになった。
時間通りに来ないのは、彼女だけだ。
だから、正直部内の評価も余り良くない。
彼女と同じパートの女子が陰口を言っているのを聞く度、女子って怖いな、と思う。
けれど俺には関係無い、そう思っていた。
彼女の、あの目を見るまでは。
合奏中に、彼女とふと目が合った。
そしてその瞬間、彼女は笑みを浮かべた。
ただの笑みではない、まるで、俺の事を嘲笑っているような笑みで・・・
その時の彼女の目は、俺と同じ、赤色だったような気がして。
背中に寒気が走り、咄嗟に目を逸らす。
今でも、彼女のその顔が頭から焼き付いて離れない。
彼女は、間違いなく、上手くは説明出来ないが・・・
闇、を抱えている気がする。
その日から、俺は彼女の事を気にしてしまうようになった──
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