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ウィッグを被り、カラコンを入れて、家を出る。
「行ってきまーす!」
今日は少し家を出るのが遅れてしまったので、急がなければいけない。
ウィッグが落ちないように押さえながら、必死に走る。
俺は、先天性白皮症──所謂、アルビノだ。
白い髪に、赤い目。
俺はそれを隠す為に、黒いウィッグと黒いカラコンを入れて学校へ通っている。
ついでに、生まれがバレると色々と不都合なので偽の苗字も使って。
当然ながら、学校に許可は貰っている。
だからこそ、乃愛ちゃんと目が合った時、俺の深淵を覗かれたような気がした。
「っ・・・!ああ、駄目だ駄目だ!」
考えれば考える程、あの時の乃愛ちゃんの顔が脳裏に浮かんで焼き付いてしまう。
早く忘れないと。
忘れろ、大丈夫、まだ覗かれてない、覗かれてない、彼女は何も知らない──
自分で自分に言い聞かせながら、走る。
それでも、学校に着くまで、俺の心は晴れないままだった。
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