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それからメイは、しばらく積極的に外に出ることをしなかったようだ。
記憶を失ってから信じてきたユウリのこともそうだが、初めて心を開いて接することができた他人である私が、カオル自身覚えがないのに、30年前に出会っていたこと。
またユウリと何があったのか。
そんな事を思うと混乱し、受け入れることが容易ではない事もわかる。
ユウリから時々メイの近況を聞くたびに私は、いてもたってもいられなくなり、間を空けることなく何度もメイを訪ねて行った。
しかしメイは私に気が付くと店の奥へ行ってしまい、会おうとしてはくれなかった。
店のガラス越しに見つかると、鍵をかけられてしまい、お店に入ることすらできなかった。
すると裏からユウリが出てきて、私に謝りながら、今日のところは帰ってくれと言う。
リオとレイはそんな時、私を気遣い一緒に海に行って、叫びに行こうと言ってくれた。
2人はある時は、私が好きだからとトランプを持って来て、海でやろうと誘ってくれたりもした。
でもさすがに海でトランプをしたら、汚れてしまうから「ありがとう」とだけ2人に言った。
夏の間、3人で本気になって遊んだのが砂山崩しだ。
集中して真剣に棒を倒さないように砂を取っていく。
そうして集中して遊んでいることが癒しになっていたりもした。
砂山崩しに飽きると、私達は裸足になって、砂浜を走り回った。
海水がもうこの時期は冷たくなってきていた。
「海にいるだけで、嫌な事を忘れられる。海に向かって叫べばなおさら」
メイとの事があったからこそ、何年かぶりにそれを強く実感していた。
海に癒され、2人の子供達の優しさに、思わず込み上げてきて声を出して泣き出してしまうこともよくあった。
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