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「メイごめん。僕が全て悪いんだ。僕は自分の過ちをメイに隠そうとした。何もかも全部隠したかったんだ。メイの記憶がないことがわかって、僕はそれを利用した。
メイ、今こそ、はっきり言う。
僕は若い時に過ちを犯した。それで僕たちの仲はずっとギクシャクしてしまった。
事故にあったあの頃もそうだった。僕はあの日、少しでもメイと話がしたくて2人で自然の多い場所に出かけたんだ。でも到着する前に、あんな事になってしまった。
子供達も僕達の事は薄々気づいていた。
その頃僕は転勤で家族とは別々に暮らしていた。時々週末に帰っても、メイはただ僕に対して、事務的にやることをこなすだけで、大して口も聞いてくれなかった。それで僕はとても寂しい思いをしていたんだ。でもそれは当然の報いだった・・・。
メイ、大丈夫か?驚いていると思うけど・・・話すの、早いか?」不器用なユウリはそう聞いた。
メイはショックと驚きが隠せない様子で、表情を硬くし、両手を握りしめて下を向いていた。
それでも懸命にユウリの言葉を受け入れようとしていた。
しばらくしてメイは言った。
「いいわ、続けて」
私はメイのそばに行き、メイを見つめその肩を抱いた。
「裕子、裕子のことも驚かせてしまうよ」
「え、私?」
「裕子、僕は、僕は・・・。マモル、マモルなんだよ」
私は自分の耳を疑った。そのまま息が止まりそうなくらい動けなくなっていた。
ユウリがマモルくんなら、どうして気がつかなかったのだろう。
見た目は確かに髪は長くなり、色も違う。
「そして僕は、去年の9月、裕子がさんふらわあに乗ることをこっそりSNSを見て知ってたんだ。それで家族で裕子に会いたかったんだ。裕子と会うことが、いつかメイのためにもなるかも知れないと思って、船旅を計画した」
私は去年の1月の辛い記憶がみるみるうちに蘇ってきて、許していたはずの、封印していたマモルへの悲しい思いが湧き出してきていた。
なぜあのとき、東京駅で私を置き去りにして行ってしまったのか、そして連絡も出来なくされてしまったのか。
「どうして・・・・
どうして・・・・
どうしてあの時、急にいなくなったの?」
私は急激に表情を変え、あの時ぶつけたかった込み上げる思いが溢れ出しそうになり、思わず顔を手で覆った。
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