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メイが少しだけ落ち着くとマモルは
「メイ、本当にごめん。すまなかった!」
と言って泣き崩れそうになっていた。
私はメイを抱きしめたままユウリの方に顔だけ向けて
「最後まで、ちゃんと話して」
と、いつもより強く言った。
「メイ、裕子、驚かせてごめん。真実を話すよ。
今朝裕子が話してくれたことに加えて話すから。
僕らが30年前船で分かれた朝、僕は個室に戻った後に自分の電話番号と住所を書いて、その紙をポケットに入れて寝たんだ。
少し寝たら裕子を探してそれを渡そうと思っていた。そして起きて裕子を探しに行ったよ。
そうすると裕子はメイや、他の人達と楽しそうにしていた。とても僕は入って行かれなかった。
しばらく2人が見えるベンチで様子を見ていたら、ついうっかり寝てしまったようでね。
それで2人を見失ったんだ。それでまた探したよ。
そうしたら裕子と一緒にいた女の子のカオルが一人で遊んでいた。
僕はカオルに裕子はどこにいるのか聞こうと思って声をかけた。だけどカオルはわからないと言う。
それで僕は言った。「これを、さっき一緒にいたお姉さん、裕子さんに渡してほしい」って。
するとカオルは「うん」と答えた。それでそのメモを弄んだりしながら、チラチラと僕の方を見たりしてたんだよ。
僕はそのまま行くつもりだったけど、カオルは僕にしばらくいて欲しそうな気がしてね。
裕子が戻ってくるのを一緒に待つ事にしたよ。
でもなかなか戻ってこなくて裕子を待たずに行ったんだ。
僕はそのメモをカオルが裕子に渡してくれて、見てくれると信じて、安心して帰ったよ。その日の夜には裕子と電話で話せるかもしれないと期待していたからね。
それが、後々メイから聞いたら、その時メイは僕に一目惚れをしたようで裕子にはメモを渡さないで、キツネのポシェットに入れたまま、何年も忘れていたようだよ」
すると、さっきまでドキドキしていたメイの鼓動が少し落ち着いてきたようだった。
メイはユウリの話す中で何か思い出しているのだろうか。
私はメイから腕を解き、その背中を優しく撫でながらメイの隣に座った。
メイの少しの落ち着きを確認すると私は「メイ」と言って、軽く微笑んだ。
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