19人が本棚に入れています
本棚に追加
貴子は、ゲンコツで寄ってきた尾田の頭を小突いた。
「いてて! なんだよ」
「出来てないし、焼肉なら何度も行ってるじゃん」
「いや、だからさー、ほら、出来ちゃっても俺らって問題ないんだよーって話を教えたかったんだよ」
立ち止まって貴子は尾田を振り向いた。
「教えてもらえなくても結構だから。そんな話。馬鹿みたい」
「そうかー。俺はいつでも準備万端だってことも知らなくていい感じ?」
再び並んで歩き始めてから尾田が言う。
「知らなくてもいいです」
きっぱりと言う貴子に尾田は、肩を落とした。さっさと歩き続ける貴子に少し遅れをとる尾田。
すると、後方から尾田が叫んだ。
「あーーー、藤谷。お前やばいぞ!」
「な、なに?」思わず振り返る貴子。
早足で近づいてきた尾田は、大変な事をこそこそ話したいらしく神妙な顔で掌をひらひらさせて、貴子を更に近くへ呼ぶ。
大きな手を貴子の耳へあてて、内緒話でもするように口を近づける尾田。
貴子が耳をそばだてると、
最初のコメントを投稿しよう!