第四十五段階 今更だけど愛ってなんだろ?

6/11
前へ
/40ページ
次へ
山盛りの煮込みを受け取って尾田は、スプーンですくって豪快に食べ始めた。大口を開ける尾田を見ながら、苦笑する貴子。 ―――尾田ったら子供みたいに無理しちゃって。無理っていえば……。昨日の白井部長も子供みたいだったな。無理して穴子食べて。 白井を思い出してくすくすと笑い出す貴子を尾田は、怪訝そうに眺めた。 「なんだよ。急に」 「え? ああ、ちょっと思い出してたの。……ああっ!」貴子は忘れていた事を急に思い出していた。 立ち上がった貴子は、スマホを手にしていた。 「ごめん。尾田。ちょっと電話してくるね」 「? ああ」 スマホを片手に貴子は、店の外へいそいそと出ていった。 ―――すっかり忘れてた。白井部長、耳治ったかな? スマホの画面に白井の番号を表示させ、寒さに身を縮めながら白井へ電話をかけた。 足踏みしながら、耳を澄ませるとやっと白井の声が聞こえた。 「はい、白井です」 「あ、あの『mare』の藤谷です。お疲れ様です。あの耳の方は……」 話し始めた貴子の声にかぶせ気味に白井の声がしてきた。     
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加