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第四十五段階 今更だけど愛ってなんだろ?
尾田って男は、子供が親の顔色を窺うみたいに、どこか切ないようで、それでいて守ってあげたくなるような表情を時折する。
それは、この男が生まれてきたときから持っている天性の母性本能をくすぐる才能だと思う。
だから、尾田が少しトンマで馬鹿でも許せる気になってしまうのは、何も今日始まった事じゃない。
貴子は、尾田の顔を見ながらため息を大きくひとつついた。
「尾田」
「なんだ?」
「前にも言ったし、今日も言ったけど、私をきゅんとさせてみてよ。もっと」
貴子と向かい合って立つ尾田の間に冷たい風が吹き抜けて行く。
「私だって、幸せになりたいもん。尾田の言うとおり人生の時間は止まってくれない。なら、最善の道を進みたいよ。だから、男として見てない尾田が私をキュンとさせてくれたら……」
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