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夜中にふっと目を覚ました。
夢を見ていたような気もするが、定かではない。
どこからか人の声が聞こえてくる。テレビではなく、隣の部屋から聞こえてくる会話らしい。
一人は妻だとわかるが、さてもう一人は誰だろう。
男の、青年というには落ち着き過ぎ、中年というにはまだどこか若さが残る声。
おれが寝ている部屋の隣はダイニングだ。
「そろそろ始めたほうがいいんじゃないですか?」と妻の声。
「いえ、ぐっすり眠っているはずだから、慌てなくても大丈夫ですよ。ちゃんと睡眠薬を料理に混ぜましたよね?」
「それはもちろん。彼の好きなゴーヤチャンブルに混ぜましたから」
「じょあ、安心だ。じっくり処理しましょう」
睡眠薬だって? 処理? いったい妻は何の話しをしているんだ。まさか……。
音を立てないように腕時計を見る。夜中のニ時四十八分。
おれはゴーヤチャンプルは好きではない。ただ、料理が苦手な妻が一生懸命に覚えてというので、うまい、うまい、と食ってあげただけなのだ。きのうの晩飯にも出たが、妻に見つからないように愛犬のゴン太に半分以上、あげてしまった。
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