第1章

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 夜中にふっと目を覚ました。  夢を見ていたような気もするが、定かではない。  どこからか人の声が聞こえてくる。テレビではなく、隣の部屋から聞こえてくる会話らしい。  一人は妻だとわかるが、さてもう一人は誰だろう。  男の、青年というには落ち着き過ぎ、中年というにはまだどこか若さが残る声。  おれが寝ている部屋の隣はダイニングだ。 「そろそろ始めたほうがいいんじゃないですか?」と妻の声。 「いえ、ぐっすり眠っているはずだから、慌てなくても大丈夫ですよ。ちゃんと睡眠薬を料理に混ぜましたよね?」 「それはもちろん。彼の好きなゴーヤチャンブルに混ぜましたから」 「じょあ、安心だ。じっくり処理しましょう」  睡眠薬だって? 処理? いったい妻は何の話しをしているんだ。まさか……。  音を立てないように腕時計を見る。夜中のニ時四十八分。  おれはゴーヤチャンプルは好きではない。ただ、料理が苦手な妻が一生懸命に覚えてというので、うまい、うまい、と食ってあげただけなのだ。きのうの晩飯にも出たが、妻に見つからないように愛犬のゴン太に半分以上、あげてしまった。     
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