1人が本棚に入れています
本棚に追加
大人しく見えて、やはり妻も女。女の恐ろしさを改めて知った。
「じゃあ、そろそろ始めましょうか」男の声に続いて、テーブルから立ち上げる音がする。
負けることを覚悟で最後の抵抗をするか、もう浮気はしないから勘弁してくれと妻に泣いて頼むか。どちからも成果は期待できないが、態度を決めねばならぬ。そうでなければ、ただ死を待つのみだ。
フスマが開く。
「起きろよ」と男が言う。
部屋の電気がつく。だが、おれのカラダは動かない。
「起きろったら。目は覚めているんだろう」と男が続ける。
「浮気はもうしません!」とおれは大声で叫ぶ。
「聞きましたか?」と男は後ろを振り向き言う。
「はい。確かに」妻の嬉しそうに答える顔が見える。
「これでもう浮気はするなよ。またドッキリを仕掛けるのはごめんだぜ」男はおれの枕元に身をかがめて言う。
「はい。わかりました」と相変わらず、カラダに力が入らないおれは、寝たままの体勢でやっと答える。
えっ、今、あいつ何って言った? ドッキリって……。
「じゃあ、自分はこれで」と男は妻にさわやかに話しかけると、そのまま帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!