第1章

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 大人しく見えて、やはり妻も女。女の恐ろしさを改めて知った。 「じゃあ、そろそろ始めましょうか」男の声に続いて、テーブルから立ち上げる音がする。  負けることを覚悟で最後の抵抗をするか、もう浮気はしないから勘弁してくれと妻に泣いて頼むか。どちからも成果は期待できないが、態度を決めねばならぬ。そうでなければ、ただ死を待つのみだ。  フスマが開く。 「起きろよ」と男が言う。  部屋の電気がつく。だが、おれのカラダは動かない。 「起きろったら。目は覚めているんだろう」と男が続ける。 「浮気はもうしません!」とおれは大声で叫ぶ。 「聞きましたか?」と男は後ろを振り向き言う。 「はい。確かに」妻の嬉しそうに答える顔が見える。 「これでもう浮気はするなよ。またドッキリを仕掛けるのはごめんだぜ」男はおれの枕元に身をかがめて言う。 「はい。わかりました」と相変わらず、カラダに力が入らないおれは、寝たままの体勢でやっと答える。  えっ、今、あいつ何って言った? ドッキリって……。 「じゃあ、自分はこれで」と男は妻にさわやかに話しかけると、そのまま帰っていった。     
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