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 末娘の高校のPTA役員になった川田裕子はこの夜、役員会出席のため学校へやってきていた。担任の押しに堪えきれず渋々引き受けたけれど、さすがに欠席という態度もとれず、ここにいた。クラス順に並ぶらしい。机に学年とクラスが書いてある。2年2組、彼女は娘のクラスの席に着いた。もうすでにレジュメが配ってある。中に役員名簿があった。  きらきらネームの子ども達の横に昭和な名前が並ぶ。裕子は同名の保護者を見つける。驚きもない。商店街を歩けば、かなりの確率でぶつかる名前であることは自覚している。右隣の席に着く人の気配がしたので、目を合わせ会釈をし、目線を名簿に落とした。柏木木の実さん。木が多い。でも、1回見たら忘れられない名前かも、と裕子は少し羨ましく思った。 「川田さんですか?」 「そうです」 「柏木このみさん?」 「はい。大体1回“きのみ”って読まれる、っていうのに慣れてるんで、嬉しいです」 「昔、文通していた相手が同じ木の実さんだったんで」 「文通? なんか懐かしい響きですね。私もやってましたよ」 「同世代? 昭和に流行りましたよね」  そう言いながら彼女と較べ自分の方がくたびれてるかも、と思う裕子だった。
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