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「もう、広告も出てるし、福袋商戦って特集でテレビでも取り上げられたんだ。今更、売り上げ競争をやらないとは言えない。それに、mareを外す事も出来ない。広告に偽りありと言う事になりかねないし、第一、理由を聞かれたらどうするんだ? 身内の不祥事をさらす事になりかねない。穏便に済ませるには、福袋の売り上げ競争はやるべき事だと社長とも話がついた」
「なんでだよ。そんな茶番に付き合えないね。もし、うちのブランドが負けたら?」
―――今年は、営業の成績が思うように伸びなかったんだ。HOKUBUデパートからの撤退は、絶対にありえない。
「負けるかどうかはわからないだろう。ネガティブに考えすぎるな。勝てばいいだろ」
「……」澤口は、思い通りにいかない事に腹を立てていた。
「心配するな。悪いようにはしない」
父親の言葉に安心したように澤口は電話を切った。
―――そうだ。親父ならやってくれる。何より俺を可愛がってくれている。今までもそうだった。高校時代に俺がはらませた女に頭を悩ませた時も、コンビニで安い弁当を万引きをした時も、すべて上手く尻拭いをしてくれた。思い通りの人生を歩めるように俺の望みが叶うように動いてくれる人だ。福袋の売り上げ数の操作なんか、親父にとって造作ない事の筈だ。
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