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「今日だけ俺、かっこ悪くても泣くから。明日からは……また同期として……今までどおり……よろしく頼む」
そう言って顔を見せずに鼻水をすすった。
―――昨日、私は長年私を好きでいてくれた尾田の告白を無残に断った。毎日一緒だった尾田の事をあっけなく振ったのだ。善良でまっすぐに見つめてくれていた尾田を泣かせてしまった私は、きっとバチが当たるかもしれない。来年はろくな年にならないだろう……本気でそう思った。
昨日の事にこだわって、ぎこちなくなりがちの貴子に比べて尾田は、いつも通りガサツで元気な男だった。
「今日からは、元の通りに同期としてよろしくって俺、昨日言ったよな?」
少し怒っているような尾田。
「うん。そうだけど」上目遣いに尾田を伺う貴子。
「なんだよ。わかってて同期の俺からの誘いを断れないのかよ。情けねぇなぁ」
尾田は、貴子の肩をバシンと叩いた。
「痛いって! 加減してよ」肩をさする貴子。
「かっこ悪いぞ! 藤谷。俺は、お前の男前な所に惚れたんだからな。いいか。俺が言うのもなんだけどなぁ」
尾田は、貴子の首を後ろから掴んで自分の方へ引き寄せた。それから、小声で言ってきた。
「今までは俺がお前から恋愛や付き合い方をアドバイスしてもらったけどな、今からは、立場を逆にしようぜ」
「逆?」
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