第五十段階 長過ぎた片想い

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「ちょっと! これって何?」 目を開けて白井の胸をドンと押した。 「何って。藤谷さんって可愛いなあって思って見てた。凄くキス待つ顔が初々しくてさ。なんか俺までドキドキしちゃった」 「はあ?」 ―――あきれた。とことんあきれ果てた。もう嫌。こんなの恥ずかしすぎる。 「なあ、目、瞑ってみて」 「もう、瞑らない!」怒ったようにそっぽを向く貴子。 ―――だいたい、心配してきただけなのに。なんでこんな事になったんだろ。 「じゃあ、そのティッシュ貸して」白井が貴子の手にしているティッシュを指差した。 「あ、どうぞ」ひらひらさせてティッシュを数枚、白井へ渡した。 すると、白井はひらひらさせたティッシュを貴子の目線の前に持って来て、端と端を指でつまんで広げた。貴子から白井の顔が見えなくなった。 目の前に広がる白い世界。 ―-―なんなの。マジック? 黙ってティッシュを見ていると少しティッシュが上方向へずれた。 白井の口元だけが見える。 ―――しかし、唇の形、はっきりしてて綺麗な薄紅色だわ。男のくせに。 感心していると、その唇があっという間に近づいてきて貴子の唇に重なった。重なる瞬間に白井が上に投げたらしいティッシュが空中をひらひらと舞い降りていった。     
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