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慌てて立ち上がり、貴子はポケットからスマホを取り出した。
スマホから聞こえてきたのは、
「おい! 藤谷どこ行ってんだよ。どっかで暇つぶしか?」
尾田の大きな声だった。
―――しまった。まだ、仕事の途中だった。私ってば!
「行く。すぐに戻るから。うん、ごめん。課長にはうまい事……あ、うん。よろしく」
電話を切ると、貴子は白井を見た。
「あの、私まだ仕事途中でして」
立ち上がった白井は、貴子を柔らかくハグした。
「うん。ありがとな。わざわざ来てくれて」
「いえ。…あのそういえば一番肝心なこと聞いてませんでしたけど……どうして、クビなんかになりそうなんですか?」
貴子から体を離した白井は、なんて事でもないような口ぶりで言った。
「ああ、レイプ未遂だったかなあ、確か。だから、クビだって」
「はああああああああああ?」
冷静に言う白井を、貴子は目だけじゃなく口まで大きく開いて眺めていた。
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