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奥二重の涼しげな瞳が貴子をまっすぐに捕らえていた。
「今、お前のいる所が俺とお前の距離だ」
階段にして4段。ジャンプして下りるのには、高すぎるし。足を伸ばして上るのには、股が裂けそうな距離だ。
階段を見おろす貴子。
「どっちか一人が頑張ろうとすると、きっとしんどい距離だと思う。でも、俺が長い脚を伸ばして3段頑張って藤谷が一段だけ下りてくれれば……」
言葉通りに3段足を伸ばして上がってくる尾田。
一段の階段が二人の間を隔てていた。
右手を軽く伸ばしてくる尾田。
「藤谷。お前にとっては俺なんか男として意識もしてもらえてない状態かもしれない。まだまだだってわかってる。待ってれば、きっと今度こそチャンスをモノに出来るって思ってた」
尾田の揺れる瞳は、貴子の手に握られたままのスマホに視線を落とした。
「もう、待てねえよ。苦しくて仕方ねえ。お前に気持ちを伝えてから尚更苦しいだけなんだ。俺なら……お前を幸せに出来る。足りない所は、俺……頑張るから。後悔させねえし。そういう自信はある」
力強く言い切った尾田は、ピンと両腕を伸ばした。
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