不幸が幸せ

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 で、それが恋だって気づいたその日から普通の人間に僕の腕が見えだして、  声が聞こえるようになったんだ」 「へぇそうなんだ」りさはため息まじりの声で言った。 こいつが何なのかわからない。 わからないけどこれだけはわかる。 ‐聞いて損した‐ りさは面白くないといった顔で腕を睨みつけた。 なぜ腕が浮いて見える時点で可笑しいと気づかなったんだろう? きっと私の頭はイカれてしまったのだ。 そんなのって… そんなのって… 最高じゃないか!! たちまち私の心が幸福で満たされた。 腕はその空間をたちきるようにしてパンッと手を叩く。 「それでここからが問題!僕が死ねない理由は全て君のせいなんだ」 「はい?」 幸せのあまり、ニヤついた顔のままで首をかしげる。 「何で学校に行かないの?僕は行きたくても行けないんだよ?」 りさの鼓動がドクンと脈打った。 「あんたには関係ないでしょ」 冷たい言葉を吐き捨てて下をうつむく。 顔にかかった髪が、りさの表情をもみ消した。 「わかった。じゃあ、公園に行こうよ」 「公園?」 「うん。公園」 腕は優しく私の手をつかんだ。 そのまま手を引かれた私はわけがわからずに、でも、夜道を進んでいく。 腕の手は冷たくて小さい。 冷たいのに心が温かくなる。 不思議な手だと思った。     
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