不幸が幸せ

6/7
前へ
/7ページ
次へ
腕は何かを言いかけてから言うのをやめた。 さっきから言いたいことばっかり言ってた癖に、こういう時は何もいわないんだなぁ りさの頭に少しづつ血がのぼる。 「ねぇ、それよりさぁ、しつこいようだけど君は何で学校に行かないの?」 私は声を上げて「ハハッ」と笑った。 ‐しつこいと思ってるくらいなら聞くなよ‐とか、 そういう気持ちが笑いを引き起こしたのである。 「いいよ、教えてあげる」 その場でクルッと回って下手なウインクをしてみせた。 「本当!?」 腕は驚いたような声を出す。 聞いてきたのはそっちだろうに、変な奴だ。 「私、自分の不幸が幸せなんだ。  だから学校に行かないの。」 「へー」 「可笑しいでしょ?」 「別に」 りさは予想外の反応に目をパチクリさせた。 「だって、君はあのマンションから出てきた時に泣いてたでしょ?」 「…うん」 「泣いてた時、自分を不幸だと思わなかった?  その時、幸せだった?」 「いや」 りさは小さく首を横に振った。 言われてみればそうだ。 私はあんなにも不幸だったのに幸せじゃなかった。 「ほらね。  君は自分を追い詰めて、それで結果を出すのが好きな頑張り屋さん。  本当はずっと寂しかったんだよ。」 「確かに…そうかもしれないね…」     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加