次の別れ

2/2
前へ
/23ページ
次へ
「お、なんだ、まだ居たのか」 一人の男が、背後から声をかけてきた。振り返ると、身なりの貧しい男がたっていた。 「……この村の、方ですか?」 「……まぁ、そういやそうだな。ここでもう長く暮らしているモンだ」 男は、そう言って歩き出した。私はその後ろに続く。 「……では、あの村に何があったか、おきかせ願えませんか?」 「あ?ニイちゃん、あの張り紙見たんじゃねぇのか?」 男は、そこら辺を走っていた豚を捕まえ、狩った。 「……読みました。勇者は相当恨まれていたようですね」 「あぁそうさ。ある一人の男が原因でな」 男は、また来た道をもどった。私も、その後を追う。 「男?」 「あぁ。そいつは村1番の大ボラ吹きでな。嘘ばかりついていたんだ。村の連中にも、旅人にもな。だが、その時は運が悪かった。なにせ、勇者に『魔物がこの村を襲っている、助けて!』なぁんて言っちまったもんだからよ。勇者は飛んだとばっちりもんさ」 男は、ある廃墟にある包丁を引っ張り出し、豚の血抜きをする。血が抜けたら、捌いた。 「勇者はあっという間に、村中の魔物を倒しちまったのさ。そして、感謝されるかと思ったら、怨み辛みをぶつけられたもんだから、すぐにこの村を出ていったんだと。勇者も弱ェよなァ……あんな連中さっさと黙らせればよかったのによ」 男はあっという間に肉塊にすると、その肉をすぐに焼き始めた。 「……ま、すぐに男のついた嘘でこうなっちまったことを知った村人は、その男を追放したんだ。当たり前だよな……ほら。食ってけよ」 男は、焼いた肉を1切れ振舞ってくれた。残りは、男が全て食べる。 「……しかし、男はなぜ、嘘をつき続けていたのでしょうか。魔物達は、なぜ人間と共存できていたのでしょうか……」 「……さぁな。今となっちゃ、もう誰もわかんねェだろうさ」 男は、流しに食器を入れると、大きな欠伸をした。 「ふぁぁ……俺様は寝る。ニイちゃんも寝ていけよ。長旅でお疲れだろ?遠慮入らねェぜ?」 「……いえ、私はここでお暇させていただきます。ありがとうございました」 私は、机の上に干し肉を置いて、家を出ていった。 村を出て、1度振り返り、また歩き出した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加