2人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、なんだ、まだ居たのか」
一人の男が、背後から声をかけてきた。振り返ると、身なりの貧しい男がたっていた。
「……この村の、方ですか?」
「……まぁ、そういやそうだな。ここでもう長く暮らしているモンだ」
男は、そう言って歩き出した。私はその後ろに続く。
「……では、あの村に何があったか、おきかせ願えませんか?」
「あ?ニイちゃん、あの張り紙見たんじゃねぇのか?」
男は、そこら辺を走っていた豚を捕まえ、狩った。
「……読みました。勇者は相当恨まれていたようですね」
「あぁそうさ。ある一人の男が原因でな」
男は、また来た道をもどった。私も、その後を追う。
「男?」
「あぁ。そいつは村1番の大ボラ吹きでな。嘘ばかりついていたんだ。村の連中にも、旅人にもな。だが、その時は運が悪かった。なにせ、勇者に『魔物がこの村を襲っている、助けて!』なぁんて言っちまったもんだからよ。勇者は飛んだとばっちりもんさ」
男は、ある廃墟にある包丁を引っ張り出し、豚の血抜きをする。血が抜けたら、捌いた。
「勇者はあっという間に、村中の魔物を倒しちまったのさ。そして、感謝されるかと思ったら、怨み辛みをぶつけられたもんだから、すぐにこの村を出ていったんだと。勇者も弱ェよなァ……あんな連中さっさと黙らせればよかったのによ」
男はあっという間に肉塊にすると、その肉をすぐに焼き始めた。
「……ま、すぐに男のついた嘘でこうなっちまったことを知った村人は、その男を追放したんだ。当たり前だよな……ほら。食ってけよ」
男は、焼いた肉を1切れ振舞ってくれた。残りは、男が全て食べる。
「……しかし、男はなぜ、嘘をつき続けていたのでしょうか。魔物達は、なぜ人間と共存できていたのでしょうか……」
「……さぁな。今となっちゃ、もう誰もわかんねェだろうさ」
男は、流しに食器を入れると、大きな欠伸をした。
「ふぁぁ……俺様は寝る。ニイちゃんも寝ていけよ。長旅でお疲れだろ?遠慮入らねェぜ?」
「……いえ、私はここでお暇させていただきます。ありがとうございました」
私は、机の上に干し肉を置いて、家を出ていった。
村を出て、1度振り返り、また歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!