三つ目の別れ

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三つ目の別れ

それは、道の真ん中にあった。3つしか建物のない、村と言えるのかどうかすらわからない村だった。 ひとつは道具屋。ひとつは武器屋。そして、ひとつは宿屋。 私はまず、道具屋に立ち入った。 「!いらっしゃい!お客さん!何か買っていくかい?見ていくだけでもいいよ!」 とても元気な店主が迎えてくれた。 「……失礼、少々お伺いしたいのですが」 「おう!なんだい?」 店主はにこやかに答えた。しかし、私の次の質問で顔が曇ることになった。 「勇者のことを、お聞きしたいのですが……」 「勇者……あぁ。勇者、ね……」 店主は振り返り、カウンター裏に飾ってあったものを手に取って見せてくれた。それは、美しい鈴蘭の彫刻の施された、ロケットだった。 「……それは?」 「こいつァな、勇者が売ったものだ。……昔ある母親が胸につけていたのを俺ァ覚えててな。こうして、あの母親が取りに来るのを待っている」 店主は少し悲しそうに、ロケットを見つめていた。そして、静かに語り始めた。 「……昔、この辺りはもっと……こんな3軒だけじゃなかったんだ。他の村より少し豊かでね。商人とか旅人の憩いの村とまで言われていたのさ。しかし、魔王が現れ、勇者も当然この村にやって来て……まるで強盗の様に何もかも持って言っちまったのさ」 店主は拳を握った。その怒りはよくわかった。 「しかも、勇者は王国からのお客様だ。手を出せばしょっぴかれる。…こんなものさぁ、世の中ってのは」 店主は、そのロケットを元の場所に戻した。私は、懐から一枚の写真を取り出し、見せる。 「その男は、この男ですか?」 店主はその写真を見て驚いた。そして、私の顔を見て言った。 「あ、あぁ!間違いない!だがあんた……どうして、この男の写真を……」 「……この男は、勇者ではありません。指名手配されていた男でした。……今となっては、もうどうすることも出来ません……しかし」 私は、先程のロケットがあるであろう場所を見た。この位置からでは、ロケットは目視できなかったが。 「そのロケットを、母親に返すことはできます」 「……ほ、本当かい!?……い、いやしかし……あの母親は……」 店主は言葉をにごした。 「……一緒に行きますか?その母親がいる場所はここからそう離れていません。……あなたも、よく知る場所ですよ」 店主は、驚いたかのように目を見開いた。そして、静かに頷くと、店を閉める用意をした。
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