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「グレイシア!!」
屋敷に飛び込むように駆け込み、グレイシアの姿を探す。
キッチンから顔を出した彼女が驚いたようにわたしを見た。
「クロエ!腕は大丈夫?あなたが刺されたと聞いて気が気で無かったの。私が一人で行かせたりなんかしなければ……」
申し訳なさそうに俯くグレイシアに首を振る。
「わたしは平気よ。それよりも……これ」
例の手紙を手渡した。
ずっと握りしめていたせいで封に皺がよってしまっている。
「私宛て?……もしかしてこの字!」
グレイシアの顔がサッと青ざめた。
慌てて封を切る。
便箋を取り出す手は震えていた。
「やっぱり……スカーレットからだわ……!」
膝から崩れ落ちるように倒れ込むグレイシア。
慌てて支えながら、血の気の引いた彼女の背をさする。
「あなたが女の子を庇ったと聞いたとき、『まさか』と思ったの。……その子は、スカーレットは、私の孫よ」
ひゅっと喉がなった。
わたしが救えなかったのはグレイシアの孫で、その子は今……。
「スカーレットは!あの子は、どうなったの!?」
縋り付くような彼女の瞳に、わたしは俯いてしまった。
何も言えなかった。言えるわけが無かった。
救えなかったのだ。
わたしが大好きなグレイシアの、大事な孫娘を。
「手紙を届けに来ようとしたんだわ。普段は私の息子……あの子の父親と、森の方に住んでいるの」
彼女の声は涙に濡れていた。
「一人で街に出てきてはいけないと、そう教えていたのだけれど。でも来月はあの子の誕生日で……」
便箋には幼い子どもの字で「しょうたいじょう」と書かれていた。
「ああ、なんてこと……!」
そのままグレイシアは泣き崩れてしまった。
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