3. わたしの仕事

9/10
前へ
/18ページ
次へ
静かに部屋の扉が閉まる。 一人になった途端、ずるずると力が抜けたように床に座り込んだ。 冷や汗と動悸でまともに立つことが出来ない。 わたしはとめどなく溢れてくる涙を拭うことも出来ず、ただ顔を覆った。 自分の不甲斐なさを呪って、傷を抉るようにあの時の光景を思い出す。 もっとわたしが強ければ、きっとグレイシアを悲しませることはなかったのに。 グレイシアはあのまま仲間に支えられ、自室に戻って行った。 立ち尽くすわたしを振り返ることもしなかった。 わたしは腕の傷が良くなるまで絶対安静を言い渡された。 新しく替えて貰ったガーゼに、またうっすら血が滲んできている。 けど、そんなことはどうでもよかった。 このまま消えてしまいたい。 逃げ出せたならどれほど楽だろうか。 ガシャン、と窓のガラスを叩く音がした。 項垂れるわたしを呼ぶようなそれに顔を上げる。 窓の向こうで一羽のカラスが翼をはためかせていた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加