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開けてくれ、と彼はもう一度窓を羽で叩いた。
彼が来てくれたことでわたしは少し冷静さを取り戻す。
ゆっくり立ち上がり窓を開けた。
彼は2、3歩脚を進めて窓のヘリにとまる。
そしてわたしの涙を拭うように体を擦り付けた。
心配しているようなそれに応えて、優しく彼の頭を撫でる。
「ありがとう、クロード。心配かけてごめんなさい」
黒い翼が水滴に濡れて、紫や青に煌めく。
カラスという生き物はただの黒ではなく、実際は羽にいろいろな色が混ざっているのだとこの子と仲良くなってから知った。
「カァ」
撫でられて満足そうに彼は鳴いた。
クロードと出会ったのは今から少し前。
町を歩く盗賊達に、彼が襲いかかったのだ。
鋭い嘴で首や腕をつつく。
力強く羽ばたいた翼で顔を叩く。
盗賊の首には、町の人から盗んだばかりのネックレスが輝いていた。
驚き、激昂した盗賊達はナイフを振り回し彼を傷つけた。
羽はぼろぼろになり、脚は切られて血が出ている。
さらに当たったナイフが彼の片目を使い物にならなくさせた。
力無く地面に落ちて、彼は鳴いていた。
このままでは死んでしまう。
そう思ってわたしは彼を布につつみ、部屋に連れて帰ったのだ。
とはいえ動物の医学に関する知識は無いから、止血したり餌を与えたりするくらいしか出来なかったけれど。
それでも彼は次第に良くなり、わたしに懐いてくれた。
今は誰かに飼われているのか、金属製のリングが脚にかけられていた。
そして、あのとき失った片目には綺麗な青いガラスの義眼が嵌められている。
わたしと同じ目の色をした彼に、家族と同じような感情を抱くようになった。
わたしは彼をクロードと呼ぶ。
もしかすると、彼は本当の家族には違う名で呼ばれているのかもしれないけれど。
言葉の通じないわたし達は家族であり、友達でもあったのだ。
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