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さんざん扱き使われて、ヘトヘトになった深夜0時。
ようやくわたしは眠りにつく。
最近、夢を見るのだ。
夢にはいつも同じ女性が出てくる。
『ミス・ブラック』。
彼女はそう名乗った。
カールのかかったショートヘアは黒く艶めき、睫毛はばさばさに長い。
猫のようなつり目と、濃いアイシャドウ。
真っ赤な口紅は身に着けられた黒いボンテージによく映える。
夢の中でしか会えない、わたしとは正反対の彼女。
わたしは彼女の事が気になって仕方がない。
彼女は優雅に街中を飛び回る。
忍び込むのは盗賊の家。
そこから盗まれたものを音もなく取り返すのだ。
代わりに置いていくのはそれとそっくりの偽物。
取り返したものは元の家に返すらしい。盗賊とこの屋敷の主のコレクションも添えて。
コレクションは売れば大層なお金になる。
そのお金で人々はこっそりこの街を出ていくのだ。
彼女は不敵な笑みを浮かべながら、街の人に幸せを運ぶ。
『ミス・ブラック』
と書かれた、キスマーク付きのカードを残して。
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