あたし

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あたし

あたしは深夜、鏡の前に座る。 そっとベッドを抜け出して、あのハゲ親父の元奥さんの部屋に忍び込むのだ。 置きっぱなしにされた化粧品を勝手に拝借する。 そばかすのある白い肌にファンデーションを塗りたくって、目には趣味の悪い紫のアイシャドウを濃く入れる。買い溜めていたのだろう付け睫毛はまだ大量に残っていた。 メイド服は脱ぎ捨てて、クローゼットの奥にしまってあった黒いボンテージに着替えた。 傷んだ金色の髪を隠すように、黒髪のウィッグを被る。 赤い紅をひくと、鏡に現れたのは『ミス・ブラック』。 気合を入れるようににっこりと笑顔を作った。 さあ、早く行かなくちゃ。 手始めに昼間のあの家族を救いに。
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