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ああ、疲れた。
屋敷に戻ってあたしはすぐさまウィッグを剥ぎ取った。
身体を締め付けるボンテージのファスナーを緩め、濃い化粧を落としていく。
鏡の前に座るのは、もう一人の『わたし』。
『わたし』は『あたし』のことなんか知らない。
夢を見ていると思っているらしい。
それでいいのだ。
汚れ役は『あたし』一人で充分だもの。
『あたし』は『わたし』を守るために生まれたの。
いつかこの街の住人が一人残らず幸せに暮らせる日まで。
奴らはもう少し泳がせてから、この国で一番力のあるお巡りさんに突き出す予定だ。
しっかり罪を償って貰うために、計画は念入りに立てておかなくちゃ。
それから何事も無かったように『わたし』はベッドに潜り込む。
ふわあ、と出る欠伸。
そっと目を閉じる。
おやすみ、『あたし』。
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