0【ゼロ】

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それを聞いた零は優しく微笑んだ。 「そっか」 「うん!」 そのあと、零は少し考えた顔をした。 私は零みたいに物知りでも、頭がいい訳でもないから、零が考えてることなんて全然わからない。 だから、こんな質問をしてきた零が、もしかしたらなにか辛いことを抱えてるのかもしれない。 私に、それは解消できないと思う。 でも、零が言ったことを受け止めることは出来るから。 「ー…一花、ちょっと近づいてくれる?」 「え、うん?」 少し離れてソファに座っていた零がそういうので、少し腰をずらした。 「びっくりしないで聞いてほしい。あと大声は出さないでね。耳貸して」 「わかった」 頷いて耳を零にそっと近づけると、小声で零はこう言った。 「ー…俺と一緒に、ここを抜け出そう」 …え? 「きゅ、急にどうしたの零!」 焦って、でも声出したらいけないと思って、小声でワタワタしていると、零はいたって真剣な顔で言った。 「一花は、本当はこんなところにいなくていいんだ。このままここにい続けることは、一花のためにならない」 …私の、ため? 「俺と一緒に来てくれ。一花のこと、ちゃんと守ってみせる。そばにいる」 零の顔は今まで見たことないくらい真剣で、今まで見たこともないくらい、かっこよかった。 「そんなとことして、いいの?」 「逃げ続けられるかなんてわからない。最後は捕まるのがオチかもしれない。それでも」 零は、初めて私にあった時みたいな少し悲しげな笑顔を浮かべて、言った。 「ー…一花と一緒に外の世界を見たいんだ」 …断れないな、って思った。 今の私があるのは零のおかげなんだ。 零がいなきゃ私は私じゃないんだ。 だから。 「…わかった。行くよ」 「…ありがとう。決行は今日の25時。夜中の1時な」 そういうと、零は私から体を離した。 そのあとは文句言うことなく、映画を見たり本を読んだりした。
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