1【イチ】

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悪いことをするのって、みんなどきどきするのかな。 眠っていてもいいよと言われたけれど、なかなか寝付けなくてわくわくしていた。 早く1時にならないかな、と時計とにらめっこしていると、窓の方からこんこん、と音が聞こえた。 ばっと体を起こして窓の方を見ると、そこには見慣れた影があって。 きぃきぃ、という音を何度かさせるとガタン、と窓にはられていた格子を外した。 こんこん、と窓がノックされたので、鍵を開けて窓を開くと、零が悪い笑顔を浮かべて立っていた。 「ここから出るよ、靴持っておいで」 「わかった」 部屋の隅にたまに部屋から出て先生の所に行ったりするために置かれている靴を履いて、零の元へ向かった。 「ちょっと怖いかもしれないけど大丈夫。俺がしっかり支えてるから安心しておりておいで」 その言葉を信じて、腕にぐっと力を入れて窓から乗り上げ零に抱きついた。 「上出来。行くよ、一花」 「うん」 走るのはバレる危険があるということで、零の指示で焦らず歩きながら外を歩き始めた。 「土を踏んだの、初めてだ」 「ー…そっか、初めてか」 「うん」 靴を履いても、踏んだことあるのは白い床だけだったからなんか変な感じだ。 「ここの施設の出入口には、厳重な警備体制が敷かれているんだ。とてもじゃないけど出れない。柵は有刺鉄線だ」 「ゆうし…?」 「ビリビリするやつってことだよ」 痛そう… 私の顔を見て考えてることがわかったのか、苦笑いした。 「だから、裏側の関係者入口を使う。ほら、たまにトラックの音とかしてただろ」 「言われてみれば」 「そこの出入口はまだロックが甘い。抜け出したのはバレるだろうけど、出てすぐの道路にタクシーを呼んである。それでとりあえずここから遠くに逃げよう」 「うん、わかった」 タクシーなんて、名前しか聞いたことなかった。 すでに、夢みたいで、初めてのことだらけだ。
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