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零と一緒に、姿勢を低くしながら落ち着いて進む。
「…あ、零」
「ん?」
「…星だ」
今日は天気が良かったみたいで、夜空には星が沢山輝いていた。
…本当に、星って沢山光ってるんだ。
「綺麗だな…」
まんまるいお月様も出ている。
外で零と暮らしていけば、毎日こんな景色が見れるのかな。
ううん、夜だけじゃない。
昼の街の景色も、見てみたかった虹だってきっと見えるんだ。
ー…不安だけど。
私はここからでたことは無かったから、外の世界なんて本や映画でしか見た事ない。
本当は、想像とは全然違う世界なのかもしれない。
だけど。
私が裾をちょん、と掴むと、零は微笑んで手を握ってくれる。
…零と2人なら。
絶対、大丈夫だって思うから。
「一花、このまま直進すると防犯カメラがある。遠回りになるけど、カメラがない方を通るよ」
無言で頷くと、零が方向を示して導いてくれる。
零となら本当に抜け出してしまえそう。
悪いことしてるのに、なんでこんなに心があったかい気持ちになっているんだろう。
今のことより、抜け出した未来のことが楽しみすぎるからかな。
そんなふうに考えていると。
『ブーッブーッ』
施設の中から大きな音がした。
「…バレた。急ごう」
零が走り出す。
手は繋がれているから、自然と私も走り出した。
「出口までもう少し、頑張って一花」
「私は大丈夫だよ零!」
あと、もう少し。
もう少しで、私達は自由だ。
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