1【イチ】

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「ちっ…くっそここまでか…一花、お前だけでも逃げろ。タクシーはもう来てるはずだ」 「なんでそんなこと言うの零!!」 「俺は…見ての通りこんなザマだ、俺なんか連れてったら、捕まるのがオチだ」 「それでも…!!零がいないと、零がいないとなんの意味もないよ!!」 気付いたら、目からは涙が零れていた。 もし、私が先にドアノブに触っていたら。 もし、私があそこで零になにか言っていたら。 こんなことにはならなかったかもしれないのに。 ー…零についていけば大丈夫だって…零に頼りきってたから。 「…泣くなよ、一花」 零は上手く動かない腕を動かして、優しく涙を拭ってくれた。 「…これ」 零はポケットから何かを取り出すと、私の手に握らせた。 「…この先お前が行けばいい行き先と…タクシー代だ。お金はそれなりに入ってるから…一花1人なら、当分は平気だ」 「そんな!」 「あんなに外の世界見たがってただろ…」 「…そんなの、零がいなきゃ意味ないのに!零が行かないなら、私もここにー…」 「早く行け!!!」 …初めて聞いた、零の叫び声だった。 「…お願いだから…行ってくれ。絶対、絶対あとでおいつく…」 「そばに居るって言ったじゃん!なのに…なのに!」 遠かった足音が、どんどん近くなってくる。 「いたぞ!あそこだ!」 白い白衣を来た男達が、私たちを捉えた。 「行け一花!行ってくれ!!」 本当はここを離れたくない。 零と一緒に生きていくんだよ、これからずっとずっと。 「…一花」 零は、優しく微笑んだ。 いつもみたいに。 「ー…絶対絶対、死んじゃダメだよ!」 私は、零から受け取った紙切れとお金を持って、走り出した。
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