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「ちっ…くっそここまでか…一花、お前だけでも逃げろ。タクシーはもう来てるはずだ」
「なんでそんなこと言うの零!!」
「俺は…見ての通りこんなザマだ、俺なんか連れてったら、捕まるのがオチだ」
「それでも…!!零がいないと、零がいないとなんの意味もないよ!!」
気付いたら、目からは涙が零れていた。
もし、私が先にドアノブに触っていたら。
もし、私があそこで零になにか言っていたら。
こんなことにはならなかったかもしれないのに。
ー…零についていけば大丈夫だって…零に頼りきってたから。
「…泣くなよ、一花」
零は上手く動かない腕を動かして、優しく涙を拭ってくれた。
「…これ」
零はポケットから何かを取り出すと、私の手に握らせた。
「…この先お前が行けばいい行き先と…タクシー代だ。お金はそれなりに入ってるから…一花1人なら、当分は平気だ」
「そんな!」
「あんなに外の世界見たがってただろ…」
「…そんなの、零がいなきゃ意味ないのに!零が行かないなら、私もここにー…」
「早く行け!!!」
…初めて聞いた、零の叫び声だった。
「…お願いだから…行ってくれ。絶対、絶対あとでおいつく…」
「そばに居るって言ったじゃん!なのに…なのに!」
遠かった足音が、どんどん近くなってくる。
「いたぞ!あそこだ!」
白い白衣を来た男達が、私たちを捉えた。
「行け一花!行ってくれ!!」
本当はここを離れたくない。
零と一緒に生きていくんだよ、これからずっとずっと。
「…一花」
零は、優しく微笑んだ。
いつもみたいに。
「ー…絶対絶対、死んじゃダメだよ!」
私は、零から受け取った紙切れとお金を持って、走り出した。
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