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事前の調査では電流が流れているなんて書いてなかった。
…昼間の俺たちの動きを見て、直ぐに取りつけたのか。
「おい、零(ゼロ)。あいつはどこに行った」
「…そんな簡単に口を割るとでも?」
地面に転がった俺を見て、研究者の1人が笑った。
「無様だなあ。同じ失敗を2度も繰り返すとは」
「失敗?どこが。一花を…お前らの研究成果を逃亡させただけでも上出来だよ」
「…くそっ」
男は俺の腹に足をねじ込んだ。
「ぐあっ…」
「舐めた口を聞くなよ、失敗作」
…一花に渡した紙には、この世間に隠されたイカれた研究を嗅ぎつけた機関の住所が書いてある。
研究室にあるパソコンからメールを送ってあるから、一花が向こうに着けばすぐにいい対応をしてくれるはずだ。
もちろん、送信したパソコンも破壊済みだから、一花の発見を少しでも遅くすることが出来るだろう。
「…おい、一花は」
この声は先生…いや、教授か。
この研究を指揮している、頭のおかしい男。
「教授。……すみません、逃がしました」
「そうか…」
教授はそう言うと、拳銃を取り出し部下へ向けた。
「教授…?!」
「いつも言っているだろう。使えない部下は要らない」
「そんな…!!」
次の瞬間には。
パァン、という銃声音が鳴り響いた。
ドサッとさっきの男が俺の近くに倒れた。
…本当にふざけている。
この男は、人間じゃない。
「…部下の命をそんな簡単に」
痺れる身体に鞭を打ち、ゆっくりと身体を起こしながら聞くと、教授はハッと鼻で笑った。
「これは政府から支援を受けている研究なんだよ。多少の犠牲は否めない」
…多少の犠牲…ね。
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